Still - From Designer

メモリアルジュエリー「Still」が
誕生した背景や込めた想い、考え。
構想から完成まで一年以上の年月が経った今、
デザイナーがこれまでを振り返ります。

ずっと、つくれずにいたもの

これまでにも何度か、「メモリアルジュエリーをつくってもらえませんか」とご相談をいただいたことがありました。

その度に、アイディアやデザインを考えたりはしたものの、自分たちなりの答えが出せないまま、実際つくるところまでは辿り着けませんでした。

それは、当時メモリアルジュエリーといえば「悲しみと強く結びついたもの」という感覚が強くあり、その意味や想いの重さを引き受けて、いいものづくりをする実感が持てなかったからだと思います。



悲しみの先に見たもの

その感覚を変える大きなきっかけとなったのが、親しい友人との別れでした。その悲しみは、これまで経験したことがないほど深いものでした。

けれど、時間が経つにつれて、その人からもらった嬉しい言葉や気持ちなど、共有した時間から自分の中に生まれたものが、今の自分自身の一部を確かに形作っているな、と強く感じるようになりました。

そう思うと、人それぞれ嬉しかったこと、悲しかったこと、誰かと過ごした大事な時間、人生にはそんな様々な出来事を積み重ねて今があり、時は過ぎても、そこで受け取ったものはしっかり自分の中に残って、今を形作っている。

そんな経験と気づきから、メモリアルジュエリーに対する自分なりの答えが見つかり、記憶とともに、これから自分と一緒に歩んでいくためのジュエリーをつくりたいと思いました。



「記憶の器」

一番大切にしたかったのは、中に納める「もの」そのものではなく、その先にある思い出や空気などの、「形のないもの」 「記憶」とのつながりです。
だからそれは「記憶の器」。

過ぎた時間とこれからの日々を、穏やかにつなぐジュエリーでありますように、願いを込めて「今もなお」「静かに在り続ける」という意味を持つ「Still」と名付けました。



閉じ込めるということ

Stillは、ご自身で中に納めるものを入れていただき蓋をします。私たちは蓋を開けることなく、頂いたまま丁寧に溶接で封をし、一度封をしたら、その後開けることができません。

中に何が入っているのかは見えなくなり、中身を知っているのは、ご自身だけです。この「開けられない」ということも、このジュエリーにとって、とても大切だと思っています。

目で見て確認するためのものではないからこそ、封入した思い出まで含めて、自分の中にある記憶とより強く結びつくような気がするんです。だからこそ、身に着けたときの重みも想いも、より特別なものになると思います。



長く、日常に寄り添うもの

Stillは、構想から完成まで約一年の月日がかかりました。
中が空洞で、そこにものを納めるという構造は、通常のジュエリーとは大きく異なり、強度や着け心地、蓋の形や、封入のしやすさ。中にものを納めるため大きさなど、何度も調整を重ねました。

身体の一部になりながら、適度な重みや存在感があり、「身に着けている」という感覚も、このジュエリーには必要だと思いました。



これからの時間とともに

自分だったら何を入れたいだろう、と考えました。
最近思っているのは、息子たちに、まだ可愛く「ママ、ママ」と言ってくれるうちに、「大好きだよ」とでも一言ずつ、何か小さな紙に書いてもらえたら最高だな、と。

彼らが大人になっても、そのStillに触れれば、嬉しかったことや大変だったことも含んだ、この愛しい日々の記憶がそっと蘇ってくると思うんです。

その記憶は、きっと自分が前を向き生きていくための大きな力になる。

人は誰しも、いろいろな記憶から何か大切なものを受け取りながら生きています。そのかけらを、自分だけの小さな器に納めて、これからの時間を大切にともに過ごしていく。

Stillが、その人にとってのお守りのような存在になれたらと思っています。


デザイナー 平 結